本当の「母の日」
今週のお題「おかあさん」
「今日は母の日だね。お母さん何が欲しい?」
これまで母の日がやってくるたび、私は母に直接聞いていました。
でも、今は世間で言う「5月の母の日」には特別なことは何もしていません。
それは数年前の母の日に、プレゼント選びをしていた時のこと。
偶然ある方にバッタリ出会い、世間話になったのですが、これがきっかけです。
偶然会ったその人は、私がこれまで出会った中で最も尊敬する男性。
恐らく60代前半だと思いますが、その彼が面白い質問をしてきました。
「母の日や父の日は、それぞれに日頃の労いと感謝を表す日らしいけど、本当の母の日や父の日って知っているかい?」
考えもしなかったことでした。
一瞬、頭が真っ白になりましたがすぐに冷静になり、ピンときました。
「もしかして、母と父が・・・両親になった日ってことですか?」
尊敬するその方はニヤリと頷きました。
「そう。つまりあなたの誕生日。子が親にするものだからね。でもそれは初めての子供でも次男次女、末子であっても同じ。」
私が人生のターニングポイントとなる時、不思議とよく会うこの彼からは、色んなことを学ばせていただいています。
この時の言葉は衝撃を受け、今でも私の心に残っています。
母は自分のことは二の次で、洋服やバッグを買ってオシャレをするところなんて、私が稼ぐまで見たことはありませんでした。
遠足のお菓子代ももらっていたし、部活もさせてもらっていた。
修学旅行も行かせてもらって、友達を理由に塾に通うと言ったワガママも聞いてくれた。
3人の兄弟が分け隔てなく、普通の学生生活を与えられた環境が当たり前でなく「母の努力だった」ことを、大人になってから知りました。
そんな母は天然なのか、中学校卒だからなのかわかりませんが・・・やっと覚えたスマホの操作で「この『せつじょ』ボタンを押すの?」と削除キーを読み間違えたり、「四文字熟語」を「四文字熟女」と言ったりします。
時には、私がアカペラで気持ち良く歌っているサビの合間に「カ~ン♪」と、NHKのど自慢の番組のマネで、ボイスゴングを入れるお茶目な部分もあります。
母は今や兄弟のLINEのネタになって、ある意味すごく愛されています。
いつも嬉しそうに「お友達にね『あんたの子供たちは、本当にしっかりしていて羨ましい』と言われるのよ」と言う母。
子供ながらに「親の教育」だと感じます。
小中高と学校の家庭訪問が始まると、担任には必ず「娘でも遠慮はいりません。必要があれば叩いて構いませんから。」そう言い放った人です。
先生が恐縮していたくらい(笑)
やっと社会人になって親孝行をしたくても、今でも時折「要らないよ。あんたも大変でしょう」と言う母には困っていますが。
「『ありがとう』と喜ぶ顔が見たかったのに」と子供は思うものです。
でも、母にとってはいつまでも・・・一生子供なんですよね。
母が物忘れが多くなったり、手が滑って物を落としたりすると、私までついイライラしてしまうこともあります。
認めたくないけど、それが「老化現象」。
自分が歳を取れば、それだけ母も歳を取ります。
母自身が実感しているのを目の当たりにすると、切なくなることも多いですが、できるだけ私は不安を見せず、笑って見守るよう努力します。
長く苦しかった低迷期の生活からようやく脱却できた日、母も私もネガティブな自分を葬りました。
ただ私はアラフォー主婦ですが子供がいないので、そこだけがむなしいです(笑)
(授かる時期を待っている、と言い張っていますが)
でも母に孫を見せる、という夢は妹が叶えてくれました。
私は自分なりに幸せな生活を見せてあげることができて、今では毎年夫に付き合ってもらい母を連れ、弟が住む島外へ旅行に行きます。
そして弟は母に、バッグや洋服をプレゼントします。
母にできる精一杯の親孝行を、今後も兄弟それぞれの形で続けます。
「5月の母の日」のプレゼントは止めました。
なぜなら、本当の母の日では無いから。
その代わり、毎年私の誕生日に感謝を伝えることにしています。
言う方も言われる方も、互いに恥ずかしいけど、色々乗り越えてきた今は、これが一番の親孝行なんだと思います。
「生んでくれてありがとう。母の日おめでとう。」と。
私もいつか、自分が母になる日を夢見て。